言葉のない世界

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言葉について考えてみたい。普段何気なく使っている言葉。この記事、もしかしたら痛いかも?最後はハッピーエンドだから大丈夫だと思う。

 

田村隆一氏の詩「帰途」を、構成をバラバラにして引用させてもらいます。

では

 

言葉のない世界

意味が意味にならない世界

言葉があるから人は誤解し、理解する。言葉のない世界を想像してみたら、浮かんだ言葉は「虚無」だった。言葉はコミュニケーションのために生まれたと思っていたけど、コミュニケーションは二次的なもの。

ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら

ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう

虚無の世界。ただ眺め立ち去る。感じることも考えることもない世界。苦痛はない。苦悩もない。無感動無目的の世界。ただ生存している、生存のために生きる世界。生存のためということすら理解していない世界。動物よりももっと原始的な生物の状態。

あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか

キミの涙に意味を見出すこともなく、キミが流す血に痛みを想像することもなく、この世のものとは思えない様な美しい夕暮れを眺め感動に涙する。そんなごくあたりまえのことがない世界。そんな世界を想像できるだろうか?

日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで掃ってくる

言葉は残酷だ。言葉がある事でボクはキミの痛みを想像する。その場を立ち去ることを躊躇させる。何も出来ないもどかしさや自己嫌悪をボクに与える。

 

言葉のない世界を想像してごらん?

 

たとえ痛くて辛くて苦しい世界でも、言葉のない虚無の世界よりはいい。

 

言葉なんかおぼえるんじゃなかった

この詩はこんな言葉から始まる。言葉なんかおぼえるんじゃなかった。言葉のない世界を想像してごらん?もし言葉がなかったら、想像することもできない。苦はないけど幸もない。痛いことを、苦しいことを伝えることもできなきゃ、理解することもできない世界。うれしいこと楽しいことを共に感じ、喜び合うことのない世界。

あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは ぼくとは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ

もし、言葉がなかったら。ボクはキミと無関係だ。ボクはキミがどんな状況でも無関心だしただ傍観するだけ。言葉のない世界では逆も同じ。キミも無関心な傍観者になる。

 

言葉のない世界を想像してごらん?

 

あなたのやさしい眼のなかにある涙
きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦

ボクは感じたい。いや、感じることはできない。ボクはキミじゃないから。言葉のある世界でもできないこと。だからその代わりに、五感を通して伝わる感覚を総動員して、ボクはキミを想像する。もし、言葉がなかったら、想像することすらできない。

 

言葉のない世界を想像してごらん?

 

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
のない世界
意味が意味にならない世界に生きてたら
どんなによかったか

どうだろう?やっぱり言葉なんかおぼえるんじゃなかったかな?言葉は凶器にもなれば癒しにもなる。人は言葉によって理解し、傷つけ、励まし、分かち合う。最初にも書いた通り、言葉はコミュニケーションのためというのは二次的なもの。言葉は意味なんだ。言葉は存在なんだ。そして言葉は意思なんだ。言葉をどの様に用いるかは、ボクとキミの意思にかかっている。

 

田村隆一詩集『言葉のない世界』より、帰途を引用して、言葉について思うところを書いてみたんだけど、きっかけはこんな本を読んだからなんだ。

新世界

新世界

 

この本の最後に「人間賛歌」という章がある。とても印象に残った言葉を紹介したい。

何より嬉しかったのは 、 「人間は 、汚い言葉よりも美しい言葉を優先的に選ぶ生き物である 」ということが分かったことだ 。ボクにとってみればこれが一番嬉しい発見で 、希望で 、これからも人間にうつつを抜かして生きていきたいと思ったよ 。

 

言葉を大切に使おう

きっと、ボクのこともキミのことも、他の誰かやいろんなこと、モノを大切にすることだと思うから。

 

最後まで読んでくれてありがとう